- Daisuke A
モデル事務所 Bananas ~ 第一章8
とりあえず、この事務所はボブ君からマネージャーに自分の事を紹介してもらう予定。数分してボブ君が戻って来た。その後ろに小奇麗な服装をした黒人男性も一緒。
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『??大介??』 ボブ君は突然で英会話スタート。面食らった、そろそろ英会話を使う時が来る心の準備は出来ていたが、ボブ君が自分に英語を発するとは考えてなかった。 ちゃんと聞き取れなかった。が、しかし雰囲気で自分とその彼を紹介してくれたのは解り、自分のブックを彼に手渡したまでは問題なく、彼は再度で奥の部屋に消えて行った。ちなみに自分の英会話力は中学校卒業レベル。
『こっちではマネージャーの事をブッカーって呼ぶんだよ、あとオーディションはキャスティングね♪』 「エントランスの人も今の人も外人だったよ!」 と、冗談染みた言葉を発しようと思ったが、ボブ君の言葉を聞いて言わずに呑みこんだ。 『大介、悪いんだけど俺、キャスティングが3本あってすぐに行かなきゃいけないから先に出るよ!後で偶然会うか夜にホテルで♪』 ボブ君は颯爽と出かけて行く姿を眺めながら、海外に対する切替えの速さ、ちょっとドライな感じがお互いプロである尊重を感じ、これからコレクションへの挑戦開始であるのかと思いながら、ボブ君の背中が超カッチョイイ!と感じてた。
日本のモデルシーンにおいて、1日で3本のキャスティングを受ける事はあまりなかったけれど、この時期なら当然なのかなとも思えた。
不思議と羨ましい感情は全くなく、むしろテンションは絶好調で期待が膨らんだ。自分はこれからどんなキャスティングを受けて、何本の仕事をゲット出来るのだろうか、スーパーモデルになったら……うふふ。 高騰感に浸っていた時間帯であり、ブッカーの戻りを待っていた。
そして待ちわびたブッカーの再登場。手には自分のブックと、何やら紙切れをヒラヒラさせながらで歩いてくる。映画のワンシーンで言うならば、ここはスローモーションであり、ブッカーは素敵な笑顔で微笑みながら、紙切れをアップされる様な感じだと思う。自分は英会話集中の準備はOK。自然と立ち上がった。
「ソーリー・○×△□???・ドゥーユーハヴ・リスト?」 英会話がサッパリわかんねぇものに急変、間違いなく待たせてゴメンねではなかった事。リストは持ってる?この二つは確実に聞き取れた。即座にリストを欲しいと答えたのは、NYの経験が活かせたと言える。リストとはその地域にある他モデル事務所の住所や連絡先が載せてある物で、多くのモデルが似た様な動きをしている事が推測できる、NYと同じ意味だった。
速過ぎるボディブローを喰らった、一発目の事務所を落ちた……。
とは言え、スーパーモデルモードだったので表情は余裕ある雰囲気を保っていたとは思う。いまさらで心拍数が上昇し始めた、胸を締め付けるとはこの感覚の事なのだろうか。
『グッド・ラック』 彼からいただいた最後の言葉だ。ありがとうと伝えて、足早に事務所を出たと思う。
不思議だけど嬉しい感情があった事は特筆すべき点と言えるが、それは1%。 それを遥かに超えるほどショックだったのが、99%だな。 少々の不安は確かに感じてはいたが、それを遥かに超えるほどの期待感と自信があったのに。 明らかな矛盾は自分でも解るが、これは本音でそのままの心情だ。
「ヤベェ、第一歩目からバナナの皮で滑っちゃったぜ♪」 そんな馬鹿な冗談を心の中で叫びながら、外に出てスーパーモデルモードを解除して一服休憩。カッコつけているつもりで、カッチョワルイと思っていた。タバコを持つ手は少々で震えていたかもしれない。
自信に満ち溢れていた中での胸が高鳴る海外挑戦であり、最初の一歩を軽くミスした程度にしか感じていなかったはずだけど、自覚のない心情の存在も感じる。
ここまでは事の始まる序章に過ぎず、ここからが酷く心割られる本編に突入するとは、全く予想もしていなかったのが本音。
なぜにそこまで強気の自信に満ちていたのか不思議でならない。
空は晴天だったのだが、少々で色褪せて感じる。 きっと天気予報は、晴れ曇りのち雨だったのではないかと思う……。 アイスクリームが食べたくなった。