• Daisuke A

初見の面持ち MW17-002


 3月18日の土曜夕方、代々木に到着。 いつもの自販機で缶コーヒーを嗜みながら一服、1時間前の連絡、ヤツの心境が気になる。 ヤツにとって私の発言は意外なものだったかもしれないが、本人による決断と気持ちの整理はとても重要であり、人生を大きく左右するお年頃であり、とても理不尽で厳しい世界なのだから、なおさら慎重に決めるべき事だと私は想っていた。

 雑居ビルの地下へ降りる階段で、同じスタジオで前の時間帯にレッスンしていたであろうダンサーと思われる数名とすれ違った。特に何かを感じたわけではないが、何故か印象的で記憶に残る。

 スタジオは鏡張りの壁一面、相変わらず地下独特の匂いを感じた。

 無音の中、少々緊張した面持ちをした数名が佇んでおり、私は特定の誰かと目を合わせるわけでもなく「おはようございま~す」と発しながら、スタジオ内の音をかける。 毎度で感じるのだが、スタジオは独特な雰囲気を感じる空間だ。 空気は動かず、必ずある程度の緊張感を感じる雰囲気が存在し、時間の経過感覚が感じられない、時計が掛かっていたとしても時間が止まっているかのような錯覚に陥る。 不思議な事に、音がかかると一気に時間が流れ出すかのような感覚。 あくまでも私個人の捉えようではあるが、この緊張感は嫌いじゃない。

 モデルのワークショップ初日、これからモデルそれぞれが何かしらの目的あって集った面子だ。 私と初見である数名と、すでにある程度の交流がある数名とは残念ながら表情が違った。 皆それぞれ、ある程度これからに対する希望が含まれている、それはそれで好い。

 何が残念かと言えば、初見でない面子の表情がユルイ……。 ある程度で触れ合っているのだからこそ、東京のファッションウィークである知識はすでにあり、多少なりの悔しさから発する鬱陶しいくらいの意気込みを感じたかった。 あくまでも手厳しい意見だが、それくらいでも足りないのが現実。

 そしてこの初日に不参加が数名。 モデル仕事での不参加ならば嬉しい悲鳴ではある。 3月から年末まで10回しか予定していないのだから、その1回の重みは軽いとは言えない。

 冒頭にあるヤツが、可能性を狭めないためにとりあえずは参加する、と考えたのは正しい。

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