- Daisuke A
初の撮影 MW17-006
音を発するものはエアコンのモーター音だけなのだが、微かに感じるかの様に耳に入る水が窓を打つ雑音が心境に苛立ちを覚える最中、スマホを片手にラインを打つ。
12年目となり慣れた空間であるカラオケバー店内、カウンターの上には前日の営業後に片付けていなかったであろうグラスや食器類が無造作に放置されている。 違和感は客席に無造作に積まれた洋服類だろう。
3月18日、フライングで組んだ撮影を行った。
挨拶と共に撮影予定のモデルが到着。 私は少々、不機嫌そうな対応で待つように伝えたと思う。 普段とは違う私の雰囲気を察したのか、バイトでもあるモデルは黙々とカウンターの周辺から掃除を始めた。 モデルには集合時間を早めに伝えており衣装の確認をするため、後々でヘアメイクとカメラマンが到着予定。
音の無い空間は、緊張感を肌で感じやすい気がする。 わざとではなかったが、ポンコツ連中に普段とは違う場面である事を認識させるのには好かったかもしれない。
店内にBGMをかけ、慌ただしくモデルの衣装チェックを開始すると同時に重い空気感も流れ始め、カメラマンとヘアメイクの撮影チーム到着。 簡易に紹介し、すぐさまヘアメイクを開始。
いつも撮影時間に余裕がなく、すでにある程度の流れを話していたため、メイク待ち時間の間は普段通りでカメラマンとモデル達とのコミニケーション談話が始まった。
簡易紹介ではあったが、カメラマンは元モデルであり海外でもかなり参考となる経験の持主である大先輩。 嗅覚あるモデルなら貴重情報の宝箱であり、本来ならカメラマンの立場上では話辛いモデル経験談ではあるが、モデル達の目標と撮影意図を理解しているが故に貴重情報を公開する気でいてくれているのだから、とてもありがたい状況下だと言える。
こういった場面、敏感に会話内容へ反応する者と、別での私語や携帯片手に時間潰しをする者など、様々な意味での違いが顕著に現れると想える。 毎度の事なので、私はあえて放置で眺めながら観察するのが好きであり、後ほどでそれを指摘する悪趣味な部分があると言える。
モデルとしての素材磨きは説明する必要もなく痛感しているであろうが、人間磨きも結果的には大きな影響となる事を未だ知らないらしい……。